時が滲む朝

 芥川賞受賞作。全文掲載された文藝春秋で読んだ。ここ数年、文芸書版が高いのでこちらで読むことがほとんど。それはともかく感想の方を。出だし、中国の学生が大学受験をする話だったので、よくこの内容で賞が取れたなと思っていた。しかし、主人公が民主主義運動に没頭し、天安門事件を経るぐらいになって、ああそうなよねと納得。いうなれば、日本人好みのラインになったというところか。物語は何も変わらず、何も始まらず、何も終わらずというところ。ただ、世の流れにひとりの人間がいかに無力であるかを淡々と語る。徹底したリアリズムが文章からにじみ出ているようだった。何かを主張している訳ではないが、何かを伝えられたようなそんな気にさせる作品だと思う。

時が滲む朝

時が滲む朝