ポトスライムの舟

 今年度の芥川賞受賞作。毎年、文藝春秋で読んでいるのだが、今年も例に漏れずそれで読んだ。去年・一昨年ぐらい変化球が来ていただけに、今回は普通に一般の読み物としたものになっていた。といっても、やはり賞の質的なものか、単純にエンターテイメントはしていない。主人公の揺れ動く心情を巧みに描きながらも作品に篭めたメッセージをはっきりと現わさず、最後まで淡々と描ききっている。判断は読者に委ねている感じで、多くは語っていない。だが、それに共感できたのも確かだ。たぶん、もう一度読み直すことはないが、何かを得られた一冊であった。

ポトスライムの舟

ポトスライムの舟