彷徨のグングニル 

 読んで内容以上に感慨深いものがあった。『ダブルクロス』の1st、2nd、3rdと各時期に書かれた作品群はそのまま矢野俊策氏の成長記録であると共に、TRPGの変化も如実に現していると思う。実は1st作品である『ドゥームズデイの魔獣』を読んだときは『ダブルクロス』というゲームに魅力を感じなかったのだ。単純にそう面白いリプレイではなかったといのが、やはり大きかったのだと思う。逆にのめり込んだのは2ndの『コントラストサイド』を読んでから、そう同・矢野俊策氏の作品からである。はっきり言って、こういうセッションがやりたいから、せっせとシナリオを書いた。当時はどうして、こうも感想が違ったのかも分からなかったが、今はだいぶ客観的に見える。『ドゥームズデイの魔獣』と『コントラストサイド』がどう違うのかと言えば、単純にプレイヤーの作るシーンが多くなったのである。見返してもらえば分かると思うが、かなりのシーンがプレイヤーの提案で構築されている。それをGMが適度に判定し、物語を共に作っているのだ。いやはや、面白い訳である。要は、三人寄れば文殊の知恵といったところか。そして、3rdではプレイヤーの提案した設定を基礎にしてシナリオが作られていた。脚本の段階からプレイヤーとの共同作業である。やはり、これも面白い。キャラがきっちり掘り下げられている。
 と、ある意味TRPGの遍歴を見ていたような感じだ。グループSNEも似たような感じで進んでいるし、これからのTRPGの指標みたいなものを見た気がしている。